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N高等学校沖縄伊計本校で「数理の翼 伊計島セミナー 2018」を開催(後編)

N高等学校沖縄伊計本校で「数理の翼 伊計島セミナー 2018」を開催(後編)

【画像:伊計島セミナーHPより http://www.npo-tsubasa.jp/tsubasa/island2018/

 

※「N高等学校沖縄伊計本校で「数理の翼 伊計島セミナー 2018」を開催(前編)」もご覧ください。

 

 

 

8月23日~27日、N高等学校沖縄伊計本校にて、開催された伊計島セミナー。今回のブログでは、実際に行われた講義の内容を詳しくお伝えします。

【講義1

2日目の午前に行われた最初の講義は、株式会社Preferred Networks様で深層学習(ディープラーニング)についての研究開発に携わり、東京大学情報工学研究科の博士課程にも在籍されている大野健太先生による講義、「機械学習・深層学習(※1)の概要と最近の研究について」でした。

 

(※1)機械学習とは……人工知能が大量のデータを解析することでルールや法則性を見つけ出し、人間が自然に行っている学習能力と同様の機能をコンピュータで実現しようとする技術・手法

     深層学習とは……機械学習をさらに発展させたもの。機械学習よりも人間的な思考に近く、深い分析が可能。

 

ご自身も数理の翼のセミナー参加者だった大野先生からは、このセミナーの意義やご自身への影響など、参加者のモチベーションを高めるお話をしていただきました。

機械学習の非常に簡単な例などを用いた大野先生の説明は、前提知識の少ない人にもなじみやすく、かつ深層学習への自然な導入となっており、このセミナーで初めて機械学習や深層学習に触れる参加者への配慮にあふれた講義でした。

そして、“分かりやすい講義”だけで終わらないのが、数理の翼セミナーです。

講義が進むにつれ、深層学習の数理的な仕組みについての説明にシフトし、新しい深層学習のテクニックや、最後は大野先生ご自身の最近の研究の紹介もありました。

内容的にはハードだったにも関わらず、参加者の中高生からは盛んに質問が飛び、このセミナーのレベルの高さを感じる幕開けとなりました。

【講義2

2日目の午後は、慶応大学理工学部で学振PD(日本学術振興会特別研究員)をされている、白石直人先生による物理学の講義、「エントロピーとマクロの普遍法則」が行われました。

水分子のような物質のミクロ(極めて小さい世界)な性質がわかっても、私たちの日常で起こるようなマクロ(ミクロ全体を俯瞰する大きな世界)なスケールでの水の現象のすべてが理解できるわけではありません。白石先生の講義はマクロな物質に現れる、ミクロな詳細によらない普遍的な性質について扱う、熱力学の説明から始まりました。

 

実際に私たちが普段から感じ取っている温度とはなにか……。一体どのような性質を満たすことで温度という概念を形成しているのか。まずは、身近に感じることのできる自然現象を元に「熱力学第二法則」を解説していただき、次にミクロな構成要素の物理法則をもとに、マクロな普遍的性質(の一部)を導く、平衡統計力学の説明が行われました。

このような統計力学の理論を通して、高校化学でおなじみの理想気体の状態方程式や、ゴムの弾性など、さまざまな現象を理解することができます。

最後に、ミクロとマクロの間でおこる「ゆらぐ系の熱力学」についての説明と、白石先生の研究成果の解説をしていただきました。

【講義3

3日目は、京都大学 数理解析研究所の星裕一郎先生に、「乗法的情報による有理数の加法の復元」というタイトルで整数論の講義を行っていただきました。

「フェルマーの最終定理(数学の定理)」のような整数論の難問の難しさは、乗法と加法が絡み合うことによって、生まれていると見ることができます。この観点から、乗法と加法の関係性についてどのようなことが分かるのか、という視点が生まれます。

星先生の過去の研究に基づき、乗法的なデータから数(加法)が復元される様子を解説していただきました。

 

講義では、中学生でもなじみやすいように、数が復元される様子を、“数が書いてある裏向きのカード”をいくつかの手がかり(乗法的なデータ)から当てていく、「復元ゲーム」をしながら説明していただきました。ステップが上がるうちに少しずつカードに書かれた数の情報が明らかになっていく過程は、とてもワクワクするものでした。

 

また、この問題の歴史的背景や、星先生の実際の研究との関わりについて説明された場面では、「遠アーベル幾何」「類体論」などの用語も出され、背後に広がる現代数学の奥深さを感じることができました。

【講義4

4日目の午前は、金沢大学 理工学域の秋田純一先生に、「コンピュータのソフトとハードの境界、そしてIoTへ」というタイトルで講義を行っていただきました。「IoT」は、モノのインターネットとも呼ばれ、さまざまなモノがインターネットに繋がることを意味しています。

講義の冒頭、携帯電話やタブレットを分解した実物が配られ、実際の半導体チップがどんなものなのか実感する時間がとられた後、コンピュータと半導体の歴史について、俯瞰的な説明が行われました。

コンピュータの歴史には「世界トップの高速化」と「身近なものへの高速化の恩恵」という2つの側面があり、かつては会社にひとつあるかないかという位置づけだったコンピュータも、いまでは身の回りに溢れ、その存在に気付かないほどになっています。この背景には、集積回路の発明と、その進化がありました。

講義ではトランジスタの微細化の歴史などに触れながら、この進化がどのレベルになっているのか、そして微細化が進んだことでCPUなどが大規模化・複雑化し、ソフトウェアとハードウェアが学問体系として分化していっている点などについての説明がありました。

また、この歴史を踏まえ、IoT時代にコンピュータの「技術」とどのように付き合っていくかのがよいか、またどのような付き合い方があるかという視点から説明していただきました。

 

ここまで紹介した以外にも、レクリエーションやバーベキューなど、内容たっぷりの充実した5日間となった伊計島セミナー。

最初はぎこちなかった参加者たちも、互いに敬意を持ちながらも、いつしか気軽に議論ができる仲間となっていき、最後に別れを惜しむ姿はとても印象的でした。

ここで得られた仲間や経験は、これからの人生の様々な場面で活きていくことになるでしょう。伊計島セミナーに参加した中高生たちの今後の活躍に期待します。

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