アーカイブ

2017/08/28

酪農体験にいってきました

アーカイブ

酪農体験にいってきました

酪農と向かい合う5日間

2017年8月21日(月)~25日(金)、北海道稚内市で職業体験“酪農体験”にいってきました。

どこまでも続く草原。稚内市大規模草地樺岡ファームでは、常時800頭の牛がいます。分業が進む酪農業界。樺岡ファームでは、主に2つの仕事を担っています。
1)雌牛の授精 2)仔牛の世話 経済動物である乳牛は、より効率的に生乳を生み出さなければいけません。いくつかあるポイントの内、病気になりやすい仔牛期の世話、そして時間的に無駄のない雌牛の授精。もちろん愛らしく癒される牛ですが、酪農の現実を体験してきました。
  • 酪農と向かい合う5日間
  • 酪農と向かい合う5日間

仔牛の世話×雌牛の管理

仔牛は人がミルクを飲ませないと生きられません。ミルクの時間やミルクを与える人の顔、声を覚えます。もちろんなつきます。牧場は経済動物を管理する場所であり、衛生面の管理、病気や成長の管理を徹底しています。それでも最後は愛情で育てるそうです。「同じ生き物。愛情は必ず伝わる」牧場スタッフの声に参加者は耳を傾けます。

一方、雌牛は600haを超える広大な草地で放牧されています。伸び伸びと群れで歩き草を食む雌牛。ストレスが少なく良質な生乳が期待できます。しかし、あくまで経済動物です。発情期の周期28日を逃せません。全頭ICタグで管理しています。タブレット、ICタグによる管理。IT化が進んでいます。しかし、ここにも雌牛への愛情があります。牧場スタッフは、全ての雌牛の身体の柄と性格を頭に入れています。「酪農は分業です。預け主様の効率化を妨げないよう、管理しています」その現実的な言葉とは裏腹に、牧場スタッフの雌牛を見つめる優しい表情。

参加者も牛追いなど仕事を体感しながら、本で読んでいたことへの違和感を持ち始めました。動物への愛情、動物の管理。これは相反しているわけではない。
  • 仔牛の世話×雌牛の管理
  • 仔牛の世話×雌牛の管理

牛の世話×身の回りのこと

牛の世話は、柵に入れるだけではなく、えさやり、掃除、移動、水やりなど。多種多様な作業があります。どれか1つでも手を抜けば、病気になり効率的な搾乳はできなくなります。樺岡ファームでも役割を分担し、参加者は各仕事を体験しました。

はじめは「片付けが苦手」「細かい作業は好きではない」「朝起きられない」そんな声もありました。しかし、目の前の牛のために、参加者は誰に言われることなく、黙々と作業を進めます。自分のために日々の生活を送ることもあるでしょう。しかし、誰かのため(牛のため)という気持ちが、仕事へのモチベーションになるのかもしれません。
  • 牛の世話×身の回りのこと
  • 牛の世話×身の回りのこと

経験×振り返り

牛舎掃除、牛追い、直腸検査、発情牛の取り出し、仔牛にミルクやり、干し草の敷き詰めなど。様々な仕事をしました。忙しく充実した時間。しかし、全ての作業が未知で魅力的だからこそ、忘れてしまいます。

参加者8人は2チームに分かれて、毎晩振り返りグループワークをしました。自分達が経験したことを洗い出し、そこで何を感じたか、何を学んだか。そして何に疑問を感じたのか。徹底的に話し合いをしました。自分の考えを言葉にする。相手の考えを理解し、共有する。酪農体験を通して、人と人とのチームワークを学びます。
  • 経験×振り返り
  • 経験×振り返り

市内観光

稚内市には酪農以外に、観光名所や美味しい食べ物がたくさんあります。酪農作業で身体を酷使し、振り返りグループワークで頭を使い切った参加者。4日目は、稚内市内観光を楽しみました。宗谷岬、ノシャップ岬、最北の駅稚内駅。酪農体験で仕事を頑張ったからこそ、観光地巡りも楽しめました。
  • 市内観光
  • 市内観光

発表

酪農体験の5日間はあっという間に過ぎていきました。参加者は自分達にとって充実した時間を形にするため、稚内市役所にて2班に分かれて発表を行ないました。

A班は、仔牛へのかわいいと思う感情、雌牛の授精などにかわいそうと思う感情。なぜ2つの感情があるのか?どちらかに決めなくてはいけないのか?この答えを自分達なりに考えました。それは、外部から来た自分達の目線、酪農家の目線の違いでした。そして効率化を目指し、牛を経済動物として管理する酪農家も、家畜としてだけではなく、共存する生き物として牛を想っていました。効率化と愛情の両方が大切という結論に至りました。

B班は、酪農作業が楽しく充実した時間でした。しかし、直腸検査など一部ためらいを感じました。酪農が抱える後継者不足と高齢化。それは、マイナスイメージが先行し、自分達が体験した酪農の”楽しみ”を伝えきれていないからではないかと仮説を立てました。そこで、高校生×大学生酪農体験の企画を提案しました。
  • 発表
  • 発表

そして…

多くを感じ、学んだ酪農体験。北海道稚内市のみなさまのあたたかなサポートの下、参加者は着実に成長しました。しかし、これからが本番です。各参加者が自分の町に戻ってからどう動くのか。N高の中で何を目標に頑張るのか。

参加者の視線の先には、それぞれの道があります。その道を切り拓くきっかけと酪農体験がなれたか否かは、今後の参加者次第です。その力強い表情を信じています。
そして…