N高等学校には、通学コースやネットコースで生徒と向き合う教職員の他に、学校運営に携わる法人本部の職員がいます。
異業種や他職種からの転職者が多い法人本部の職員たちは、生徒のスクールライフがより豊かになるような企画を立案したり、教職員が働きやすい環境を整えたりと、これまでの経験を活かしながら、N高等学校の運営に携わっています。
※所属、インタビュー内容は2019年10月取材当時のものです
金堂 : 僕や川上さんが所属している“コミュニティ開発部”や“企画部”は、一般的な学校では珍しい部署かもしれませんね。
川上 : そうですね。私が所属している企画部は、入学式や卒業式などの生徒が参加する行事、投資部などの部活、N中等部など新しい企画立案や、それらの発表会など幅広い業務に取り組んでいます。入学式や卒業式は珍しくありませんが、N高はひと味違います。
金堂 : N高の入学式はVRゴーグルを用いて、バーチャル空間で行っていますよね。去年は、本校のある伊計島のビーチや、宇宙空間に移動したり、ノーベル賞を受賞された大村 智さんが登場したり盛り上がりましたね。毎年いろんなことをしているから、僕も「今年はどんな入学式かな?」と楽しみにしています。
川上 : 学式や卒業式といった大きなイベントは1年前から、企画してるんです。MCやお祝いメッセージなどを担当していただく方のキャスティング、会場の演出、当日流す動画の制作進行、さらに生放送の手配まで行っています。
職員ごとに担当している業務は異なりますが、私はこれまでに2020年4月開校の“EXPG高等学院”〔※〕などを担当しました。
金堂 : 後ろに大きなLEDのモニターがあって、すごくスタイリッシュな発表会でした。
川上 : ありがとうございます! 発表会はN高のブランド・イメージを損なわないように各部署と連携をとって進めています。他の部署とも連携が多いと、新しいアイディアや情報がどんどん入ってくるので「あれもやりたい、これもやりたい」と考えが湧いてきます。企画部にいると“進化していく大切さ”を感じることができて楽しいです。
※EXPG高等学院:数々のアーティストやダンサーを輩出してきた「EXPG STUDIO BY LDH」と「N高等学校」が提携し、ダンスを学びながら高校卒業資格を取得できる新しいスタイルのスクールとして、2020年4月に開校。学長はEXILE TETSUYA。川上 : 金堂さんの所属する“コミュニティ開発部”という部署名は、一般的に聞き慣れないかもしれませんね。
金堂 : コミュニティ開発部は、生徒の“コミュニケーション促進”を目的とした部署です。N高は“ネットの高校”なので、コミュニケーションツールとして、IT企業でよく使われているSlackやZoomなどのオンラインツールを使っています。その一方、文化祭などのオフラインイベントもあります。僕たちの部署は、オンラインとオフラインイベントそれぞれの利点を最大限に活かし、生徒がスクールライフを楽しめるように考えています。
川上 : コミュニティ開発部は、学校に関するアンケートを取っているかと思えば、オンラインを駆使したネット部活・ネット運動会・ネット遠足や、新入生をサポートするための「新入生オリエンテーション」など、いろんなことを幅広く行っていますよね。
金堂 : はい。コミュニティ開発部は、生徒と密接に関わる部署です。
僕は、2019年の『N高文化祭 in ニコニコ超会議』〔※〕でプロジェクトリーダーを担当しました。N高の文化祭は生徒が実行委員会を作り企画立案から行っています。生徒たちはオンラインでミーティングをし、企画を進めていきます。僕は実行委員の生徒たちと、オンラインやオフラインで連絡をとりながら、文化祭に来てくれた方がどうすれば喜んでくれるかを考えていきました。
文化祭が開催されるまでの半年間は紆余曲折。生徒同士でコミュニケーションロスが起こったり、思うように作業が進まなかったり……。でも、試行錯誤や失敗を繰り返す過程で生徒たちがどんどん変わっていくんです。当日、文化祭が開催でき、終わったあとに泣いている姿を見ると“青春してるな”と、彼らの姿と努力に感動しました。
川上 : 仕事をしていて楽しいのは、生徒がチャレンジし、成長する姿を間近で見られることですね。
金堂 : そうですね。だからこそ、生徒たちが、もっとチャレンジできる環境を作りたいと考えています。なかなかチャレンジできなかった生徒が、失敗を恐れずに挑戦できるきっかけを作っていきたいですね。
川上 : チャレンジする生徒を目の当たりにするからなのか、N高の職員には自分もチャレンジしようという人が多く、職員もチャレンジできる環境が整っていると感じています。
まず、なんといっても“風通しがいい”。所属している部署の上長とコミュニケーションがとりやすいだけでなく、違う部署の人に助言を求めたら「面白そう、こういう方法があるよ!」と、すぐに提案をもらえたり。みんながチャレンジしているから、自分もチャレンジしやすいんです。
金堂 : 確かに。「失敗しても大丈夫!」という雰囲気がありますね。自分のことを第一に考えるよりも、誰かのために動く人が多いので、その雰囲気がチャレンジしやすい環境につながっているのではないでしょうか。
川上 : じつは、私が学校教育に興味を持ったのは、弟が学校に行けなかった姿を見ていたからなんです。もちろんN高ができるより前の話ですから、当時はネットの高校なんてありませんでした。「どうしたらいいのかな?」と答えのない問いを考え続けていたんです。
前職で、クラウドソーシングを運営する会社に勤めていたのですが、そこではスキルを持つ人たちが活躍する現場を見てきました。その後、ドワンゴに入社し生放送チームで企画運営の仕事に携わりました。自分自身が社会で経験を積んだ上で、改めて教育について考え、N高なら前職を活かしながらも教育に携われそうだと思い、ドワンゴからN高に移りました。
金堂 : 川上さんはN高のどんなところに惹かれたんですか?
川上 : “社会で戦える武器を生徒に持たせたい”というN高の教育理念に惹かれたからです。またN高を創ったKADOKAWAはカルチャーに、ドワンゴはネットにそれぞれ強く、ネットカルチャー世代の生徒たちにマッチしてる学校であるところに魅力を感じました。
“企業×学校法人”という運営は、企画進行がとにかくスピーディーで新しいものを取り入れる雰囲気があります。前職が教育関係ではない私でも、大いに経験が活かせると感じました。
実際に入職してみると、職員たちの前職はさまざまで「いろんな人が活躍できる場」があるんだと感じ、まさに「多様性を認める」N高らしいなと感じています。
金堂さんは、いかがですか?
金堂 : 僕は、30歳になるまでIT系のベンチャー企業で働いていました。会社が成長していく過程で社員の意識や会社自体が変わっていく姿に心を動かされたんです。その会社が上場したとき、「別のことにチャレンジしてみたい!」と思いました。ふと、周りを見渡したら、イマの時代を生きる高校生たちがいて、彼らが成長し変化する姿をみたい、「教員になりたい!」と感じました。
川上 : 教員免許はお持ちだったのですか?
金堂 : いいえ、当時は持っていませんでした。それで、30歳のときに教員免許を取るために通信制の大学に入り学び直しました。
川上 : 社会人になってから、学び直しをされたんですね。
金堂 : ただ、大学で学校教育について学ぶなかで、“変えたくても変えられない”現状があることを知りました。それでも、僕は時代が変化しているんだから、変えなきゃいけないと思ったんです。N高は、僕が感じたことを、学校というカタチのなかで叶えられるんじゃないかと感じました。
僕はN高に入るまで、仕事のやりがいが「自己成長の大切さ」でした。もちろん、それはとても大切なことですし、僕自身もっと成長したいとは思っています。でも、今は、生徒たちが成長して、いろんなことができるようになっていく姿を見るのが嬉しいんです。
自分のことではなく、誰かの成長が自分の喜びになっていることに気がつき、N高に入って自分も成長しているんだと客観的に感じることができました。
川上 : 生徒の成長する姿が自分の成長につながる。私もそう感じます。
だからこそ、まだまだできることって多いんじゃないかと思っています。たとえば、今、地方活性化に取り組んでいる村や町の場をお借りして、農業や商業をやって職業体験してみたり……とか。いつも「あれしたい、これしたい」、「これを高校生のときに体験できたらすごいな、刺激的だな、世間もびっくりするな」って考えています。
金堂 : いいですね。やりたいと思ったことを「やりたい」と提案できる環境がN高にはある。それは、生徒たちにとってもより良い環境を作れるきっかけになります。これからも、みんながチャレンジできる環境を作っていきたいですね。
川上 : はい。N高と一緒に私自身、まだまだチャレンジしていきたいです。