No.02

ネットコースと通学コース働き方と生徒との向き合い方

鶴岡悠貴 / N高等学校 ネットコース 教員
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土井あずさ / N高等学校 通学コース 教員
※所属、インタビュー内容は取材当時のものです

N高等学校には、オンラインベースのネットコースとキャンパスベースの通学コースにそれぞれ教職員がいます。教職員たちの働き方には、共通している部分と、コースごとに異なる部分があります。そこで、ネットコースと通学コースの教職員が実際にどのように働いているのかを紹介します。 所属、インタビュー内容は2019年11月取材当時のものです

TSURUOKA YUKI
DOI AZUSA

生徒の「なぜ、どうして」に
ファシリテーターとして向き合う

鶴岡 ネットコースと通学コースの教職員は、ともに各キャンパスで勤務していますが、少し働く上で異なる部分がありますね。

土井 そうですね。生徒一人ひとりに担任の先生がいる点は同じですが、ホームルームからしても形式が違いますよね。通学コースはキャンパスで朝礼と終礼を行っています。

鶴岡 たしかに、違いますね。ネットコースの場合、“オンライン上で生徒と会う”という大前提があるので、Slack〔※〕を使ってホームルームを行っています。生徒は、自分の所属するクラスのチャンネル〔※〕を訪れ、ホームルームに参加します。クラスのチャンネルは、コミュニケーションの場になっていて、委員長がいるクラスもあったりしますよ。

土井 委員長はどんなことをするんですか?

鶴岡 僕のクラスのホームルームには、毎回テーマがあるんです。進路について話す日や、雑談の日があります。クラス委員長は会話がテーマから脱線したら、うまく話を本筋に戻してくれたりします。その他にも、オフ会の企画や、みんなに声をかけて60人のクラスメイトが同じ日程のスクーリングに参加した なんてこともありました。

土井 60人が同じ日に参加はすごい! まさに “そこにクラスがある”といった感じですね。通学コースでは、おもに“所属キャンパスのチャンネル“を使います。チャンネルは学校からのお知らせや授業で使用する資料の共有など、事務的な用途で使うことが多いかもしれません。生徒同士や教職員と生徒の会話は、キャンパスでできますから。

Slack:ビジネス向けのコミュニケーションツール。N高等学校では、開校以来、学校で使用するICTツールのひとつとして活用。 クラスのチャンネル:クラスのチャンネルとは、同じ担任のクラスメイトたちが所属するSlack上の場所。

鶴岡 そう考えると、同じコミュニケーションツールでも、使い方は微妙に異なっていますね。Slackで生徒とコミュニケーションというと、一般的には「どういうことだ? できるのか?」となってしまうと思いますが、SNS時代の生徒たちなので、ICTツールを使ったコミュニケーションの取り方に慣れているんです。
“ネットだから”という理由で、コミュニケーションが取りにくいなどといった、不便さは全くありません。生徒たちとはSlackやメールなどで会話をしているので、物理的な意味では対面していませんが、“会っていないという感覚はない”ですね。

土井 ICTツールをどう使うかなどの違いは微妙にありますが、N高の教職員としての働く上で大切な部分は、ネットコースも通学コースも同じですね。
通学コースには、アクティブラーニングを促進させるため「プロジェクトN」〔※〕の授業があります。生徒が主体的に課題解決し、実際で役に立つ実践力を身につけることが目的です。
生徒たちはグループごとに「なぜ、どうして」を考えています。教職員はそんな生徒たちの“ファシリテーター”なので、答えを教えません。生徒がみずから考えることが大切ですし、それが実社会で役立つ力になりますから。

鶴岡 進路相談についても同じですね。どの教職員も生徒が希望している進路に対して、頭から否定したり、教職員が自分の考えを押し付けたりすることはありません。生徒の考え、やりたいことを素直に応援するということは、N高で働く上でとても重要なことだと思います。

土井 そうですね。だからこそ、生徒たちも「やればいいんでしょ!」という考え方ではなく、自分で考えた上で教職員に相談し、そこで自分が納得した答えを、受け入れる生徒が多いですね。教職員が柔軟に対応すればするほど、生徒の可能性がどんどん広がっていくのだと思っています。

プロジェクトN:思考力・コミュニケーション力・ディベート力・世の中を知る力・プロジェクトマネジメントなどの力を身につけるための課題解決型学習。

memo

左から、slack、クラスのチャンネル、プロジェクトN

N高の教職員は
生徒一人ひとりの“伴走者”

鶴岡 一般的な学校では、教職員は担当教科を一斉授業で教えながら、生徒の個別対応を行い、さらに各行事の準備をしながら、学校の運営も考えて……となりますが、このあたりもN高は違いますね。

土井 そうですね。私は地歴公民の教員免許を持っていますが、N高の日々の学習で私が一斉授業をするわけではありません。単位認定に必要な「Basic Program(必修授業)」は、通学コースもネットコースも、同じ学習アプリ「N予備校」を使い、生徒は自分のペースに合わせて映像で学習しますからね。
私たちは、生徒がわからない質問に対して解答を教えるのではなく、解答が導き出せるようにサポートをする立場です。

鶴岡 ネットコースも同じですね。その方法がコミュニケーションツールやメールを使うというだけです。

土井 それに、N高の場合、たとえば職業体験〔※〕で訪問する企業との調整や、全体的な行事の準備などは学校運営の本部職員が担当しています。専門分野に特化した職員が行っているので、私たち教職員は生徒に向き合う時間に集中できる環境がありますね。

職業体験:N高等学校が行っている課外学習。日本各地でさまざまな職業を体験し、自己の理解を深め職業の実像を掴む。

memo

左から、ネット学習の様子、職業体験(酪農)、職業体験(刀鍛冶)

鶴岡 教職員として、とても良い環境で働けていると感じています。私たちは、生徒一人ひとりにしっかりと向き合う、可能性を伸ばす、学習意欲を引き出すことに注力できますから。

土井 教職員は、生徒一人ひとりの“伴走者”ですね。

鶴岡 生徒一人ひとりのことを考える時間、生徒としっかり話をする時間が大切との考えがN高にあるからこそできることですね。
通学コースの教職員は、何人ぐらいの生徒を担当し、どのように生徒と向き合っているのですか?

土井 通学コースでは40人〜50人の生徒に対して、担任と担任助手が2人配置されています。通学コースには、週1コース、週3コース、週5コースがあり、さらに週5で学校に通うプログラミングクラスがあります。そのため生徒ごとに登校日数が異なります。また、キャンパス内には私が担任をしている生徒と、別の先生が担任の生徒がいます。担任をしている生徒とは、学期ごとに個人面談を行うので、学習・生活・進路をはじめ、趣味など幅広い話をしています。
担任をしていない生徒とは、個人面談で長時間話すということはありませんが、授業、休憩時間やキャンパスごとの行事など、さまざまな場面で関わることが多いです。
ネットコースはどうですか?

鶴岡 ネットコースは、学年により異なりますが、通学コースの2倍強の生徒の担任になります。一般的な学校のクラスで考えてしまうと多いように思えますが、先程の話にもあったように、N高の教員は生徒と向き合う“伴走者”に専念していますし、ICTツールをフル活用しているので問題ないんです。

土井 ネットコースの生徒の場合、一人ひとり学習スケジュールも違えば、1日の使い方が大きく違いますもんね。

鶴岡 そうなんです。コミュニケーションツールやメールで1日に約10人の生徒と連絡をとり、月に1度は電話をしています。そこで、レポートの進捗やスクーリングの予定を確認したり、生徒の近況を聞いたりします。入学当初は、こちらから連絡することが多いのですが、しだいに生徒から連絡が来るようになってくるんです。「先生、あのね。こんなことしてるよ」って!

土井 それは、嬉しいですね!

鶴岡 とても嬉しいです。ネットコースは、生徒が全国各地、ときには海外に在住しているので、いろんな場所にいる生徒たちが“クラスメイト”になるんです。オンラインでの出会いが、「スクーリングで会おうよ」とか「文化祭に一緒にいこう」と住んでる地域に関係なくオフラインにも広がります。私も生徒とスクーリングや文化祭で会うと、初対面なんですが「はじめまして」ではなく「やっと会えたね」となります。
100人いれば、個性も100通り。こんなにたくさんの生徒に出会えるのは、本当に教職員として幸せです。

土井 鶴岡さんは、新卒で入職したとのことですが、N高のどこに魅力を感じたのでしょうか?

鶴岡 中学生のころから教職員になることを希望していました。就職活動をしていたときに、新しい社会システムを創造していく“ネットの高校”と知り、「新しい場所に集まる高校生は、どんな生徒たちなのだろうか?」と思ったんです。そのころ、異業種の内定を頂いていたのですが、「教職員になりたい」という思いが熱くなり、N高に入職しました。
土井さんは、転職してN高へ入職されたそうですが、なにかきっかけはあったのでしょうか?

土井 もともと、大学生のときに塾のアルバイトをしたことがきっかけで「夢は教職員」でした。ただ、教職員になる前に他の業界で働いてみようと思い、人材業界で企業を相手に飛び込み営業をしていました。
その後、「教職員になろう!」と決意し、参加した採用イベントでN高に出会ったんです。話を聞いているだけで、ワクワクしてきたのでその場でエントリーしました。

鶴岡 前職が今に役立っていることはありますか?

土井 ありますね。いろんな企業を訪問していたので、情報だけでなく知見を活かして、生徒の質問に答えることができます。N高の教職員には、新卒の人もいれば、前職が教職員だった人もいる。そして私のように異業種からの転職者もいます。いろんな視点があるというのは、N高の強い武器だと思います。

鶴岡 生徒の個性は千差万別。さまざまな経験を持った教職員が近くにいることは、とても心強い環境ですね。

土井 本当にそうですね。これからも、N高の教職員として一人ひとりの生徒にしっかり向き合っていきましょう。

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