
10月2日から6日までの4泊5日、三重県紀宝町にて船大工の職業体験に行ってきました。
三重県最南端の町「紀宝町」は、伝統的な川舟、水と緑に囲まれた自然、豊富な柑橘類、そして熊野古道と、多くの人を惹きつけてやまない魅力的な町です。
今回の職業体験では、
・川舟の櫂(オール)を制作し、その櫂を使いチームで川舟を進める
・自分達で体感した川舟の魅力を外国人観光客向けサイトに投稿する
ということを目標に都会を離れた非日常の体験をしてきました。

【初日】
参加したN高生同士はほぼ初対面で、参加動機はそれぞれ。
「ものづくりの現場を見たい」
「コミュニケーションスキルを身に付けたい」
「外国人と交流したい」
共通していることは、職業体験にワクワクして参加していることです。
「少しでも自分を変えたい」――そんな気持ちで職業体験に臨んでいる一方で、本当に周囲とうまくやっていけるかというドキドキもありました。
そんな参加者の気持ちを汲んで、紀宝町の担当の方が、初日の夜にバーベキューを開催してくれました。
バーベキューは炭に火をおこすところから始まります。一つの物事に協力しているうちに、生徒たちの始めの緊張感から来るよそよそしさはいつの間にか消え、夜の闇に広がる海に輝く灯りが、これからの5日間の日々を照らしているようでした。
バーベキューの最後はすっかり打ち解けていました。


【2日目・3日目】
熊野川体感塾の谷上塾長と廣田先生の指導の下、川舟のオールとなる“櫂”を制作しました。
怪我をしない立ち位置、設計図から作業への落とし込み、電動工具の使い方、曲線を描く工程、スピードと正確性のバランス等々、様々なことを学びました。
一見、単純作業に見える櫂制作ですが、実は奥が深く、生徒たちは集中力を保って作業を続けます。
目的達成に向けて、1つのモノを完成させる、そんな仕事の基本を学びます。
機械での生産と違い、手作りの櫂には一つひとつ個性が出ます。作り手の性格や丁寧さなど、様々な”自分”が反映されます。
個性を大切にするN高等学校らしく、生徒たちは自分で作った櫂を通して、自分の個性を見つめ直します。


2日間かけて、180cmの櫂を完成させました。
その櫂を使って、熊野川を下り、そして遡上して戻ります。
水面からの風景はいつもの景色とガラリと変わります。水平線に続く山、ゆったりとしかし確実に流れる川、そしてどこまでも広がる空。生徒たちはまわりの景色が変わると共に、自分自身や自然との共生など様々なことを感じていました。
そして誰もが一番痛感したことは、一人だけでは解決できないこともあるということ。
船の右側は女子、左側は男子。力強く櫂を漕ぐ男子側がなかなか進みません。
焦りから漕ぎが小さくなり今度はタイミングが合いません。
個性を鍛えつつ、周囲と協同することの大切さを体験を通じて改めて学んでいきました。


景色を楽しみ、山と川と空を感じ、流れる水に時間を感じた生徒。
2時間後には、協調も個性と同様に重要なことだと再確認しました。
川舟から降りた生徒たちは名残惜しそうに川から離れようとしません。水切りやアユの手掴みをしながら、熊野川に何かを感じているようでした。
そして、自分が作り上げた櫂を大切なものを扱うようにしっかりと握りしめています。


職業体験中は、毎晩2~3時間のグループワークを繰り返しました。
その日に“実行したこと”、“知ったこと”、“感じたこと”を、自分たちで言葉にして共有します。
そして人の言葉ではなく、体験から感じた紀宝町や川舟の魅力を自分の言葉に変えていきます。
その過程を通して、自分の個性を明確にし、課題を自ら設定します。
始めは意見を出すこと自体が難しかったグループワークも、お互いに聴く姿勢を持ち、サポーター役の大学生から考えるための切り口を教わり、活発に意見交換ができるようになりました。
グループワークの成果として、外国人観光客向けサイトに英語で川舟について投稿し、また自分達の活動を紀宝町役場にてプレゼンをおこないました。


【最終日】
様々な経験をした紀宝町での職業体験。あっという間の5日間。
お世話になった地域のみなさまに向けてプレゼンを行ないました。自分達が学んだこと。そしてどうすれば紀宝町に訪れる外国人観光客が増えるのか。
自分達が体感したからこそ、絶対に紀宝町に来てもらえれば、満足してもらえる。
そんな気持ちを相手に伝えることに挑戦しました。
3人でチームを組み、2チームが投稿した英語でのレビューは以下のURLからご覧いただけます。


