
N高等学校・S高等学校・R高等学校が2017年より実施しているオリジナルの探究学習「プロジェクトN」。2025年10月から12月にかけて行われた「プロジェクトNβ」では、開発中の新作ゲーム『リミットゼロ ブレイカーズ』のマーケティング戦略立案に挑戦しました。
全国から選抜された代表6グループが、株式会社KADOKAWA取締役 代表執行役社長 CEOの夏野剛氏へプレゼンテーションを実施。その結果、最優秀チームに選ばれた「秋葉原 G班」の生徒6名が、KADOKAWAオフィスでのプロモーション実務会議に招待されました。
今回は、プロの現場で生徒たちが何を学んだのか、その模様をレポートします。
ビジネスの基本「名刺交換」からスタート
2026年2月、緊張した面持ちでKADOKAWA富士見ビルに集まった生徒たち。「実際に働いている大人の方と接する機会は少ないので緊張します」と、全員緊張の面持ちでした。
その後、会議室に移動し、まずはビジネスの基本である名刺交換から体験しました。KADOKAWAの担当者から直接マナーを教わり、一人ひとりが丁寧に名刺を受け取る姿が見られました。
「企画を一言で表すと?」本質を問う議論
会議は生徒たちの企画提案を振り返るところから始まりました。
生徒たちの案は、ターゲットを30代男性という王道ストーリーを好む層に設定。駅の広告でQRコードを読み込むと4時間のタイマーがスタートし、時間になるとゲーム本編の内容に即したノベルゲームが遊べるようになるというもの。駅広告のQRコードを起点に、心理的な「カリギュラ効果」を活用したノベルゲームを展開するという独創的なものです。
会議の冒頭、KADOKAWA担当者より「この企画を一言で表すと何か」という問いが投げかけられました。これは、海外拠点との連携も多い実務の現場で、言語の壁を越えて要件を簡潔に伝えるために欠かせない視点です。生徒たちは「直感的な体験企画」、「常にワクワクさせる企画」など、自分たちの言葉で企画の本質を再定義しました。
普段の仕事の場でも活用している実践的な方法を聞き、生徒たちからはこれから始まる実務会議への気合いが見えました。
「広告はアートではない」実務ならではの視点
続いて、ブレスト前に前提条件の整理が行われました。
「広告はアートではなく、課題を解決する手段。必ず結果を出さなければならない」というプロの言葉に、生徒たちは真剣に耳を傾けます。実施時期、ターゲット層、予算といった具体的な制約条件が示されることで、議論はより現実的なものへと深化していきました。
プロの視点に触れるブレスト
前提条件の整理を終え、生徒とKADOKAWA担当者によるブレストが始まりました。
担当者からは「提案されたQRコードのデザインでは、一目でゲームだと伝わりにくい。忙しい30代男性がターゲットなら、最初からゲームであることを明示した方が良いのではないか」という具体的な指摘がありました。これに対し生徒は「設置場所を秋葉原に限定するなら明示すべきですが、新宿や渋谷などでは、ゲームに馴染みのない層も惹きつけるためにあえて伏せていました」と、戦略的な意図を説明しました。
この回答を受けた担当者からは「それならば、設置駅に合わせてクリエイティブを使い分けるのも有効な手法だ」と、さらに踏み込んだ実務的なアドバイスが送られました。
プロとの議論を経て、生徒たちからも「ターゲットや効果を数値でシビアに捉えると、ゲームと親和性の高い秋葉原に絞って実施し、確実にゲームをプレイしてくれる層へ向けた企画にシフトした方が良いかもしれない」といった、より精度の高い意見が飛び出しました。
さらに、実務における極めて重要な視点として「広告からの離脱」についても議論が及びました。担当者からは「企画自体は素晴らしいが、いかにユーザーの離脱を防ぐかが成功の鍵となる」との指摘がありました。
担当者からは、「例えば、本企画の核である『4時間の待ち時間』をなくせば離脱は減らせますが、それでは企画の独自性が失われてしまう可能性もありますよね。そこで改めて『本当に4時間待たせるべきなのか』『離脱を防ぐために待ち時間をなくしても企画が成立する代替案はあるか』を話しあえたらと思います」といった、施策の根幹に関わるクリティカルなディスカッションが行われました。
プロの視点が飛び交う「本物」の会議に、当初は圧倒されていた生徒たちでしたが、後半には自らの意見を積極的に発信し、最後まで真剣に議論へ臨んでいました。
会議の締めくくりに担当者からは、「アイデアを出すブレストは楽しいものですが、そこから実現可能性の高い施策へと昇華させていくのがプロの技術です。企画のすべてをそのまま形にすることは難しいですが、皆さんのアイデアや意見のエッセンスは、今後のプロモーションにぜひ取り入れたいと考えています。楽しみにしていてください」との言葉をいただきました。
自分たちのアイデアが実際のビジネスに繋がっていくという期待感とともに、実務会議は幕を閉じました。
KADOKAWAオフィスツアーへ
会議終了後は担当者より、飯田橋〜九段下エリアにあるKADOKAWAのオフィスツアーをしていただきました。
実際にKADOKAWAの社員の皆さんが打ち合わせをするスペースや、関係者向けに映画の上映会などを行う「試写室」にも特別に入らせていただくことに。
試写室では、映像作品を特別に少しだけ上映していただきました。
なかなか出来ない体験に生徒たちからは喜びの声が上がりました。
さらに移動し、KADOKAWAから出版されている書籍が並んだ部屋へ。
普段は立ち入れない出版・エンターテインメントの舞台裏に触れ、生徒たちの表情には喜びが広がりました。
今回の実務会議・オフィスツアーを終えた生徒たちからは、次のような感想が寄せられました。
・「予算やコンバージョン、離脱率など、実務の流れを学べた。今後のプロジェクトにも活かしたい」
・「リーチ数だけでなく『離脱数』が懸念点だと気づけた。企画の実行には緻密な設計が必要だと実感した」
プロの現場で本物の課題に向き合ったこの経験は、生徒たちにとって授業だけでは得られない大きな学びとなりました。



