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【職業体験】1冊の本をみんなで“冒険する”~最先端の図書館で集団読書を体験~

【職業体験】1冊の本をみんなで“冒険する”~最先端の図書館で集団読書を体験~

 

※N高では、希望者を対象に、日本各地のさまざまな職業をリアルに体験できる「職業体験」を行っています。

 

普段はあまり本を読まないけれど、たまに本屋さんや図書館に行き、本を手に取ってみる。しかし、なかなか読書が続かず三日坊主になってしまう。そんなことはありませんか。

1人では読めない本も何人かで分けて読めば感想を共有できるし、何より楽しい!

それが “Active Book Dialogue(ABD)”というワークショップの魅力です。

 

今回は2020年1月27日(月)から5日間、「本の世界を冒険する、本を通じた交流会」をコンセプトにしたスタディツアーを岩手県紫波町で実施しました。

◆スケジュール

1~2日目

・オリエンテーション

・お試しABD『桃太郎』

・好きな本のポップづくり

 

3~4日目

・ABD『君たちはどう生きるか』

・ABDで読みたい本選び

・ABD『いい子じゃなきゃいけないの?』

・ABD告知ポスターづくり/発表

 

5日目

5日間の振り返り

Active Book Dialogue(アクティブ・ブック・ダイアローグ)は英語表記の頭文字を取って「ABD」と略し、1冊の本を数人で読むという読書方法です。

章ごとなどで担当を割り振り、自分のパートを読み込み、 その内容をコピー用紙5~6枚程度にまとめ、5分間で発表し合います。ABDのメリットは以下のようなものがあります。

 

・本が苦手な人でも短時間で本全体の内容を理解することができる

・要約してプレゼンする力を鍛えられる

・参加者間で疑問や感想をもとに対話することで、深い気づきが生まれる

 

インプット・アウトプット・ディスカッションというプロセスを一度に経験することができ、1冊の本からより深い学びが得られるため、ビジネスマン向けの読書会などで取り入れられています。

 

この記事では、ABDを通して学びを得た生徒たちの様子をお伝えしたいと思います。

 

ABDを行うにあたり、開催場所としてご協力いただいたのは、2016年度に“Library of the Year(※1)”を受賞した「紫波町図書館」。

紫波町図書館は、「図書館は本を借りる場所」という従来のイメージを覆すさまざまな取り組みを行っています。

地元の採れたての農産物を売るマルシェとコラボしてレシピを置いていたり(料理レシピ本の展示と産直のポップ)、絵本の中に登場する料理をつくるイベントを行ったり(絵本の中のクッキング)、スローライフを求めてやってきた農業初心者の方に向けた情報交流会をカフェと連携して行ったりなど「人とまちがつながる」仕組みづくりに力を入れています。

※1 Library of the Year…NPO法人「知的情報資源イニシアティブ」が、図書館など、全国の知的情報資源に関わる機関を対象として授与する賞(2006年~)。公共的な取り組みだけではなく、他の図書館にとって参考になる優れた活動や、独創的で意欲的に取り組んでいる具体的な事例を評価し、広く知らしめることを目的とする。全国の図書館を総合的に評価して、ベストの図書館を決めるものではありません。(IRI HPより)

 

まずは司書さんに案内していただきながら、生徒たちも図書館全体を見て回りました。

図書館の見学を終えたら、いよいよ「ABD」を始めます。

 

最初はお試しということで、最初は「桃太郎を10分間で読み、要点を30分でB5用紙6枚にまとめてみよう」という簡易的なワークに取り組みます。

本来のABDとは違い、1人ですべての物語を読み、文章をまとめる作業です。

良く知っているストーリーでも、どこにポイントをあててまとめるか、という部分に苦戦。「思ったより時間が足りなかった」「難しかった」と、なかなかうまく要点を抜き出すのが難しかった様子でした。

 

その後、ペアになり発表してもらいましたが、「同じ内容を読んだのに、まとめ方も人それぞれで面白かった。自分は起きた事実をメインにまとめてみたが、登場人物の性格や行動をまとめている人もいて、興味深かった」と、感じ方の違いを楽しんでいた生徒も。

 

ABDの大体の流れをつかんだところで、次は物語文のABDに挑戦します。選書については、タイトルは知っていても、あまり読んだことがないもの、少し難しい内容のものに挑戦してほしい、という意図から、ベストセラー『君たちはどう生きるか(吉野源三郎著)』を選びました。

今回は、本来のABDの進め方を、高校生に合わせて少し調整しました。

 

 

1章をペアで担当し、内容をB5用紙6枚にまとめ、発表します。それぞれまとめ方も発表スタイルもさまざま。

チームによってはさらに前後を分けて読んだ生徒もおり、「(同じ章の)後半の内容がよくわからなかったけれど、ペアの相手が内容を説明して助けてくれた」、「時間が足りなかったけど楽しかった」と話してくれました。

 

プレゼンの後は、壁に貼り出した他のチームの内容を見て回り、ふせんでコメントを残していきます。

他の章は読んでいないため、疑問がいっぱい。プレゼンでわからなかった部分も、最後の対話で疑問が解消され「あー!なるほどね、そういう流れだったのね!」と、すっきりした表情になっていました。

 

いよいよ『いい子じゃなきゃいけないの?』を読んでいきます。

精神科医である香山リカさんによる、「現代のいい子」について書かれたこの本。

「あんないい子が」「まじめな子が」事件を起こすなんて...…という周囲の意見をよく聞くけれど、そもそも“いい子”って何だろう?という問いにはじまり、いい子でありすぎたために “いい子病” にかかってしまった子供たちの例を挙げています。

本の最後は「いい子病はいつでもやめられる。勇気がいるが、いい子でなくても周りの人に嫌われたり見捨てられたりすることはない」という励ましのメッセージで締めくくられています。

 

実際に中高生と交わした診療室でのやりとりの描写もあり、思春期の中で親との葛藤に悩むことのある同世代の生徒たちにも「自分事」として捉えられたようで、集中して読み込んでいました。

 

本来のABDであれば1章を1人が担当しますが、生徒たちの意見を取り入れ、ルールを変えて進めます。

読むスピードやアウトプットに自信がない、という生徒には2人組で1章を、1人でやってみたい、という生徒には1人1章を担当してもらうことに。

集中できる場所に移動するなど、図書館の公共スペースを使い、時間いっぱい取り組んでいました。

 

その過程では、

・ペア同士で助け合って読む

・物語文では時間配分がうまくいかなかった反省を活かし、シンプルな文章で要点をまとめる

・ていねいに下書きをし、自分たちなりに文章を構造化してまとめる

・イラストやグラフなどで見やすいように情報をまとめる

・発表中も、ペアの相手へ声掛け等でフォローする

 

といった工夫が見られ、着実に今までの活動からの学びを活かして取り組めていることがわかりました。

 

生徒たちにとって、普段話すことのない同世代の人と親のいない環境で同じ本を読むことで「いい子」について内省することができたようです。同じ時期に同じ本を読んだからこそ共通言語ができ、対話しやすかったのでしょう。

「この本にして良かった」と笑顔を見せていました。

 

最終日は、輪になって5日間の振り返りを行いました。言葉で話す生徒も、文章にまとめてくれた生徒もいました。

 

・ABDを体験してみて、インプットは得意だけどアウトプットは苦手だということに気づいた

・新しい本の楽しみ方を知れて良かった

・自分の抱えていたものに改めて触れて、考える機会をもらった

・進路を決めるきっかけになった

・人づきあいが苦手で、最初はすごく不安だったけど、最終日は帰りたくなくて落ち込むくらいすごく楽しかった

 

ABDという手法で複数の本を読むことで、自分ひとりの読書では味わえない対話を通した新しい気づきを得て、濃い5日間になったようです。

 

 

本好きな人も、そうでない人も取り組める新たな本の楽しみ方、ABD。今後も、図書館という場でのいろいろな企画を開催していきたいと思います。

ぜひご参加ください!

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