
※このブログは、N高等学校・ネットコース2年生の賀須井 美咲さんに書いてもらいました。
初めまして。 賀須井 美咲です。私はネットの高校マイプロジェクトと研究部での活動で、「子どもの自己決定権」をテーマに研究しています。
私は2025年11月8日、植草学園大学主催の「第8回 植草学園 高校生プレゼンテーションコンテスト2025」に出場し、奨励賞をいただきました。
このコンテストは、高校生の柔軟な発想や活動の成果を発表する場を提供し、主体的な活動や学習を支援することを目的としています。
私が発表を通じて得られた大切な気づきをお伝えします。
「子どもの声」に耳を傾ける探究
今年度のコンテストのテーマは「理想の共生社会をめざして〜共感力が創る未来の社会:相手の気持ちを理解する〜」でした。
私の発表テーマは「子どもの声に耳を傾け、未来を『ちょっと』変える共感の力」です。今回のテーマは「共生社会」「共感力」を掲げていて、私がこれまで探究してきた「子どもの意思はなぜ届きにくいのか」という問いと深く結びついていました。
発表では、特に医療現場での意思決定を中心に、社会の中で子どもの意思がどう扱われているかを紹介しました。
医療現場での違和感
子どもの命に関わる医療の現場でも、治療方針を決めるのは大人である医師と保護者が中心です。子ども本人の声は「参考意見」として扱われてしまうことが少なくありません。
「医師」「親」「子ども」の三者がそれぞれ「子の利益」を考えているにもかかわらず、「正しさの基準」が異なるため意見が衝突することがあります。その中で、子どもの意思は最も軽く扱われがちです。
私自身、14歳で火傷で入院した際、鎮痛剤の増量を希望しても親の同意が得られず見送られた経験があります。この時、「自分の体のことなのに自分で決められない」ことに強い違和感を覚えました。最終的な判断権限が大人にあり、子どもの意思が参考程度に留まる構造こそが、子どもの声が軽く扱われる原因だと実感しました。
日常的な構造にも注目
今回の発表では、子どもの意思が後回しにされてしまう「日常的な構造」についても紹介しました。
中高生世代の保護者へのアンケートや取材から、「子どもが受診を望んでも親の判断で様子見になる」「大人の都合が優先されてしまう」など、日常の中に子どもの声が届きにくい社会構造が浮かび上がりました。
これは特別なケースではなく、どの家庭にも起こりうる「普通のこと」として存在している点に、このテーマの難しさがあります。医療現場だけでなく、学校や家庭など、子どもが生活するさまざまな場面で同じ構造が繰り返されている事実は、会場の方々にも大きな驚きを与えました。


発表で得られた大きな励まし
発表後、プレゼンテーションをご覧いただいた方から「あなたの違和感が、社会の問題を考える入口になっている」という言葉をいただきました。
この言葉は、私が発表で最も伝えたかった部分にまっすぐ届き、大きな励ましとなりました。データや制度の説明だけでなく、「子どもがどう感じているか」という主観的な経験が、社会の課題を考える上で重要だと認めてもらえたからです。
また、他の出場者からも「自分にも似た経験があった」「もっと深く聞きたい」と声をかけてもらい、新しい友人もできました。個人的な探究のように見えるテーマが、実際には多くの人とのつながりを生む力を持っていることに気付き、探究が持つ広がりや社会性についても理解が深まりました。
今回の発表で伝えた重要な点の一つは、子どもの意思を尊重する基準として、年齢だけで線を引くことの問題です。
日本では「18歳かどうか」が判断基準になることが多く、子どもの理解力や状況を十分に評価しないまま対応されるケースが少なくありません。
しかし、子どもと関わる専門家への取材では、「中高生は大人と同じように状況を理解して説明できるケースが多い」という声が複数ありました。
年齢ではなく理解力に基づいて子どもの意思を評価する視点は、まだ日本では議論が十分ではありません。今回の発表を通し、その必要性と可能性を共有できたことに大きな意味があったと感じています。会場の反応や、その後いただいた言葉を通して、子どもの声に丁寧に耳を傾けることは、大人にも新しい視点や気づきをもたらすということが、はっきりと分かりました。
今後の探究に向けて
今回のコンテストは、私にとって探究を深めていく上での大きな節目となりました。
発表に向けて内容を整理し他者に伝える過程で、自分の研究の不足している点や、今後掘り下げるべき方向も見え、調査や取材の方向性についても改めて考える機会となり、これからの探究へのモチベーションにもつながりました。
子どもの意思が適切に扱われ、ひとりの人間として尊重される社会の実現に向け、これからも探究と発信を続けていきます。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
【ネットの高校マイプロジェクトについて】
角川ドワンゴ学園の課外授業「ネットの高校マイプロジェクト」は、生徒が地域や自身の興味関心をテーマに、課題解決を目指すプログラムです。月に一度のミーティングやサポーターとのコーチングを通し、生徒はプロジェクトを磨き上げ、社会とのつながりや課題解決へのアプローチを学びます。
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【N高グループ研究部について】
研究部は、学術研究を志す中高生(所属校は問わない。無所属も可)をサポートするコミュニティです。文系・理系を問わずさまざまな分野で専門的な学習や研究活動を行う中高生が参加しており、研究部アドバイザーのサポートや発表会、専門家による講演などを通じて、研究に関する知見を深めることができます。
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