
N高グループの中で最大級の部活である、N高グループ美術部は、部員数約3,200名(2025年3月時点)にのぼり、趣味でイラストや作品を制作する人、プロを目指す人、自分たちでイベントやコンテストを企画・開催する人など、多様なメンバーが在籍し、それぞれのスタイルで創作活動を楽しんでいるのが特徴です。
美術部では、定期的に特別講義やイベントも開催しています。2025年2月13日(木)には、日本TRPGの金字塔『ソード・ワールド2.5』の著者であり、ゲームデザイナーの北沢慶先生を講師にお招きし、「TRPGキャラクターデザイン講座」を開催しました。
TRPGとは「テーブルトーク・ロールプレイング・ゲーム(Tabletalk Role-Playing Game)」の略称で、ゲーム機などのコンピュータを使わずに、紙や鉛筆、サイコロなどを使いながら、人と人との会話を通じて物語を進めていく“対話型”のゲームのことです。
講義には80名以上の部員が参加し、『ソード・ワールド2.5』の世界観・舞台設定をふまえキャラクター設定やデザインの考え方について学びました。そして、学んだことを活かす場として、3月には「ソード・ワールド2.5 キャラクターイラストコンテスト」を開催しました。
ワークショップとイラストコンテストの詳細や、コンテストで「優秀賞」を受賞した生徒のコメントをお届けします。
当日は以下のタイムテーブルで講座が進行しました。
1:TRPGのシステム、『ソードワールド2.5』の世界観の紹介
2:キャラクターデザインに取り組むにあたっての課題の進め方の説明
3:それぞれの種族、スタイルの解説
4:リハーサルとして、実際にキャラクターの経歴(生い立ちや性格など)を生徒が考える
5:描くときのコツをレクチャー、細かい設定の補足や質疑応答
その後、ワークショップで学んだことを実践するソード・ワールド2.5 キャラクターイラストコンテストを実施しました。
短い制作期間にもかかわらず数多くの作品が寄せられ、部員たちの熱意が光るコンテストとなりました。応募作品の審査は、北沢先生に加え、『ソード・ワールド2.5』などの書籍挿画も手掛けているイラストレーターのモレシャン先生、そしてKADOKAWA編集部によって行われました。
審査結果は、Slack(角川ドワンゴ学園で使用しているコミュニケーションツール)の美術部チャンネル、および、美術部の公式Xにて発表。今回のコンテストでは、4名の生徒が受賞し、審査員からも高い評価が寄せられました。
「優秀賞」を受賞した、もちいないさんのコメントを紹介します。もちいないさんは、ネットコースに所属する3年次の生徒です。
<もちいないさんのコメント>
この企画に参加したきっかけ
もともとイラストを描くことが好きで、参加できそうなコンテストを探していた際に偶然、本企画を見つけたことがきっかけです。
以前からTRPGに興味があってプレイ動画もよく観ていたことが、応募の後押しになりました。
応募作品を作る上で工夫したところや頑張ったところ、楽しかったこと
普段は自分の好きなように創作をしているため、与えられた世界観を反映させてキャラクターのデザインを考えるという体験はとても新鮮で、刺激的でした。世界観に沿ったビジュアルを考えることにやりがいを感じながら、楽しんで取り組むことができました。
今回は初めて武器や防具の描写にも挑戦。課題資料や実際に存在する装備を参考にしながら、キャラクターの性格やスタイルに合わせてデザインを試行錯誤しました。衣装のデザインも、『ソード・ワールド2.5』の世界観に合っているか意識しつつ細部まで調整を重ねています。
制作にあたっては、まずダイスをいくつか振って複数のキャラクター(3〜4人ほど)を作成し、その中から一番魅力的に感じたキャラクターを選んで描きました。
作業時間はおよそ25時間。正確に計ったわけではありませんが、キャラクターデザインの大枠を固める段階から表情差分を含めた完成まで、それくらいの時間が掛かっていたと思います。表情差分は、人型の表情を4種類を用意。さらに、キャラクターが獣人(リカント)であることから、頭部が獣化した「獣変貌」状態の差分、そして負傷状態の差分を制作しました。
慣れない表現や難しさに直面する場面もありましたが、それも含めて、終始楽しみながら制作に向き合うことができました。
また、世界観に合わせてキャラクターのバックボーンを自由に考えられる点も魅力で、それをどのようにイラストへと落とし込んでいくか思案する工程も非常に楽しかったです。
企画に参加してどんな学びになったか
前述したとおり、すでに存在している世界観や物語に合わせてキャラクターをデザインするという取り組み自体が初めての経験。自由な創作とは違った難しさがある一方で、作品の世界を理解しながらキャラクターをデザインしていくプロセスは、自分にとって大きな学びとなりました。
もちろん慣れない作業に戸惑うこともありましたが、その分、キャラクターが完成したときの達成感もひとしおです。
受賞者へのフィードバックでは、自分では気付きにくい改善点について具体的にアドバイスいただき、今後の制作にどう活かすかを考える貴重な機会になったと感じています。
依頼・評価する側の視点や基準を知ることができたことも、大きな収穫です。
その一方で、設定をキャラクターデザインに十分落とし込めなかったと感じる部分も多く、自分の引き出しの少なさを実感しました。
今後は資料の集め方やアイデアの広げ方を工夫しながら、より説得力のあるキャラクターデザインを目指して創作をしていきたいです。
審査講評
<北沢慶先生>
一目でリカントと分かる外見的特徴と、フェンサーらしい軽装備とシャープな武装、それでいて洒脱な服装のデザインが、見た瞬間に引き込まれる個性を発揮しています。
「経歴表」によって導き出された経歴を、深い物語性のあるものにまとめたセンスもよいですね。単なる冒険心ではなく、失った人との再会を求めるというテーマは、『ソード・ワールド2.5』の世界観を活かしつつ、独自のドラマ性を生んでいます。
豊富な表情集や、動きのあるポージング、靴の爪先の爪に見られるアレンジなど、いろんなところに魅力が詰め込まれています。リカントの耳の位置が設定の範囲内で描かれている点もポイントでした。
<モレシャン先生>
背景ストーリーが非常に魅力的で、キャラクターデザインともしっかりマッチしています!デザインからキャラクターの性格が伝わってきて、とても引き込まれました。装備品にも細かなこだわりが感じられ、冒険している様子が生き生きと想像できます。渋い色合いと綺麗なブルーのグラデーション、金属の質感の組み合わせもうまくマッチしていて、色彩感覚も非常に優れている印象です。
最後に
今回のワークショップとコンテストの挑戦を通じて、生徒たちは与えられた設定を読み解きながらキャラクターをデザインしていく技術を身につけていきました。プロのクリエイターからのフィードバックや評価を受ける経験も、今後の活動の指針や自信につながったはずです。
N高グループ美術部では、月に1回、プロのイラストレーターを講師にお呼びし、事前に提出された部員の作品を添削していただく機会も設けています。実践的な学びの積み重ねが、次のステージへとつながっていくことを期待しています。
今後もN高グループでは、生徒の「好き」や「得意」を活かした実践の機会を提供していきます。
▼N高グループ美術部について
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