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【研究部】次世代の加速器施設に訪問しようとしたら、研究者と出会えた話

【研究部】次世代の加速器施設に訪問しようとしたら、研究者と出会えた話

※このブログは研究部3年生・山下大樹さんに書いてもらいました。

 

高校3年生になり、受験勉強が本格化し忙しい毎日ですが、今年は受験勉強の合間を縫ってでもやりたいことがありました。それは「高エネルギー加速器研究機構」(以下、KEK)の研究所訪問や、世界最大の水チェレンコフ宇宙素粒子観測装置「スーパーカミオカンデ」等の施設見学です。

 

私は「理論物理学全般」特に「量子重力理論」と「素粒子物理」に関して興味があり本で勉強していますが、実験となると個人では難しく、実際にどのように実験が行われているか非常に興味があったからです。しかし調べてみると、こうした研究施設の多くは個人で行くことが難しく見学を断念せざる得ませんでした。

 

そんなある日、国際リニアコライダー(以下、ILC)を思い出しました。

ILCは、現在計画されている最新型の加速器です。

 

私はかつて、物理学者で東京大学特別教授の村山斉先生のILCに関する講演を聞いたのをきっかけに理論物理学・宇宙物理学や素粒子物理学に興味を持ち、本格的に学習・研究を始めました。まさに高校生活、人生の転機にもなった講演で、とても印象に残っていました。

 

                                  (画像)研究部の企画で村山斉教授に質問する筆者

ILCについて調べると、岩手県に「岩手ILC連携室オープンラボ」(以下、オープンラボ)というものがあることを知りました。興味を持った私は窓口である岩手県ILC推進局に、私が普段どのようなことをし、どのようなことに興味をもち、どのようなことをオープンラボの訪問を通じて知りたいかという思いと共に 見学を依頼しました。

 

すると岩手県ILC推進局から電話がありました。通常の見学では職員の方が案内・説明するそうですが、先に送付した文章を丁寧に読んで下さり、私の活動や興味関心を把握してくれていました。そして今回は特別に、ILC研究者でKEKの吉岡正和名誉教授をお呼びして説明して下さるとのことでした。吉岡先生は長年、ILCの技術開発等に携わってきた方です。驚きや喜びとともに「少し事が大きくなったぞ」と感じ、しっかりと自己紹介する必要があると思いました。

 

そこでこれまでの活動実績として、研究部で私が発表した内容等をILC推進局に送ったところ、吉岡教授は私個人のことはもちろん、研究部についても認識して下さっていました。その上で「何を知りたいのか」「何を聞きたいのか」と頂いたので、私は「ILCは従来の加速器とどのような点が大きく異なるのか」「ILCはどれほどのスケールまで見ることができるのか」等についてお聞きしたい旨をお伝えしました。

 

その後、何度かやりとりをさせていただくうちに、吉岡先生からある依頼が届きました。それは私が見学に行く日に、仙台からの中学生が先生のレクチャーを聴きに来るので、その助手をしてほしいという内容でした。私はこれは滅多にないチャンスだと思い「ぜひお手伝いさせて下さい!」とすぐにお伝えしました。

 

そして迎えた見学当日。

盛岡駅で吉岡先生とスタッフの方と合流し、ILCオープンラボに向かいました。

 

ラボで吉岡先生に質問をすると「なぜなのか、考えてごらん」と投げかけて下さり、その答えをきっかけに議論が始まりました。例えば私には「大型ハドロン衝突型加速器(LHC)があるのに、なぜ世界の研究者はILCを必要としているか」という疑問があり、「円形加速器だと電磁波を放出してしまい、初めに与えたエネルギーが衝突時には減ってしまうが、直線加速器であればそのような心配がないからだ」と考えていました。それに対して先生は、そうではないことを、ヒントを出しながら丁寧に話して下さり、最終的に私なりの結論が出せるように導いて下さいました。このようにして学びを深めながら、中学生へのレクチャーの準備と予行練習も行いました。

 

 

中学生が到着すると、早速、吉岡先生のレクチャーが始まりました。

非常に興味深い内容で、質疑応答の時間には「重力が他の力に比べて弱いのはなぜですか?」「宇宙に果てがありますか?」等の質問が相次ぎました。専門分野に近い質問に対しては、私が中学生に答える機会もいただき、とても貴重な体験をすることができました。吉岡先生、そして中学生の皆さんにとても感謝しています。

 

今回、オープンラボを訪問した際、吉岡先生のほかに数名の研究者の方ともお会いすることができました。その縁で世界トップ級の研究者である、KEKの早野仁司教授とつながりKEKの超伝導加速器等を見学することができました。

 

また研究所も見せていただき、研究費を獲得する際のお話や今後の研究計画、私の研究に対するアドバイス等もして下さいました。

 

ILCのオープンラボやKEK施設の見学、そして研究者とお会いし様々なお話ができたことは私にとって興味深い経験となったことはもちろん、研究部員として今後の学術・研究活動に役立てていきたいと思います。

今回ご協力頂いた皆さま、お忙しい中本当にありがとうございました。

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