ネットの高校ブログ
『君の名は。』を手掛けたアニメーター田中将賀から学ぶ
“人を惹きつけるキャラクターのつくりかた”
© 2016「君の名は。」製作委員会
2月2日(日)に、アニメーション映画『君の名は。』や、テレビアニメ『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』などのキャラクターデザインを手掛けたアニメーターの田中将賀氏による、「人を惹きつけるキャラクターのつくりかた」という特別授業を実施しました。
※ニュース記事からも詳細をご確認いただけます。
『君の名は。』を手掛けた世界的アニメーター田中将賀から学ぶイラスト授業“人を惹きつけるキャラクターのつくりかた“を2月2日に開催
はじめに、アニメーターになったきっかけをお話しいただきました。
田中さんはもともと漫画家を目指していたそうですが、親御さんの反対もあり大学に進学。絵を描き続けながら学生生活を送っていたところ、アニメーターという仕事を知ります。
”絵を描いたらその分お金になる”という理由から「これしかない」と決意し、アニメーションの専門学校に入学。卒業後アニメ制作会社に入社し、現在のキャリアをスタートされました。
続いて、アニメのつくりかたと作画監督のお仕事について解説していただきました。
まず最初に「企画」があがり、脚本家が「シナリオ」を制作、それをもとに監督や演出家が1話ずつ「絵コンテ」をつくっていきます。絵コンテとは漫画でいうところのネーム(※コマ割りや構図、配置の下書き)で、映像イメージを伝える設計図のようなものです。
そしてここからがアニメーターの仕事となる、レイアウト、原画、動画という工程で、具体的な形をつくっていきます。「レイアウト」でカットごとの画面構成を決定し、「原画」というキーとなる作画を行います。そして動きをつけるために原画と原画の間を埋める中割りを描く「動画」という作業に入ります。
アニメーターは色塗りをせず、「仕上げ」と呼ばれる塗り専門のスタッフが行います。
さらにキャラクター(動くもの)を動かすのがアニメーターの仕事なので、背景も別のスタッフが描くそうです。
そして、それらをひとつの画面にしていくのが「撮影」です。
撮影したものは、放映用に合わせて尺の調整などを行う「編集」をし、最後にキャラクターに声をあてるアフレコとSE(環境音や効果音など)やBGMなどの「音響」を経て完成となります。
テレビアニメーション1話あたりの製作期間は、絵コンテから完成まで約半年ほどで、作画数は4,000~5,000枚にもなるそうです。多くの工程にたくさんの方たちが関わってアニメはつくられていくのですね。
多くの人が携わってつくられていくアニメだからこそ、クオリティの管理は欠かせません。仕上がった作画をチェックし修正するのが作画監督の役目となります。
作品を通した統一感は作画監督のがんばり次第というお話は、非常に興味深く面白かったです。
本題となる“人を惹きつけるキャラクターのつくりかた”では、「まずターゲット層やどういう作品なのか、企画を読み込むことが重要です。企画と自分が良いと思っている絵にギャップがあれば見る人は違和感を感じます。なので方向性を理解し、“ この作品にとって良いキャラクター”をつくるということを常に考えています」とお話しくださいました。
企画段階から参加し、自分の個性を全面に出すのではなく、何が求められているか理解しその中でデザインすることが人を惹きつけること、つまりヒット作につながるんですね。
続いては、事前に生徒から募集した「飲食のシーン」を描いたイラストを添削していただきました。
このテーマにした理由を伺うと「日常のシーンというのは、普段から皆さんが体験していることなのでごまかしが利きづらく、手や人と食べ物の対比など観察力が試されます。手が描けるようになると表現や芝居の幅も広がるのでこのテーマにしました」とのこと。
ちょっとしたテーマの裏にもしっかりとした意図があるとわかり、またまた勉強になりました。
作品ごとにコメントを交えながら下記のようなポイントを踏まえて、丁寧に添削いただきました。
・絵のシチュエーションやストーリーを考える
・アイレベル(目線の高さ)とパース(遠近感のある構図)を理解する
・ポイントとなる部分はきちんと正確に描く
・慣れないうちは曲線ではなく直線を使う
・しっかり観察してリアリティを出す
どの生徒の作品もうまく描けているように思えますが……
上の2つの作品、田中さんのご指導のもと修正した生徒作品が「N高公式Twitter」で公開されています。プロの視点で赤入れをしてもらうと、気づかなかった修正点が出てくるから驚きです。添削後は絵に説得力が増し、さらに良くなりました。添削前の作品との違いを見比べてみてください!
また、リアルタイムで田中さんに描いてほしいキャラクターのリクエストをコメントで募集し、ライブドローイングで描いていただくという貴重なコーナーを設けていただきました。
リクエストにより決定したのは、映画『君の名は。』の主人公・三葉。
人気キャラクターが描かれていく様子をいちから見ることができるまたとない機会に、画面上には生徒たちの興奮気味のコメントが飛び交いました。ドローイングの最中も、『君の名は。』のキャラクター設定の裏話などをお話しくださった田中さん。その場にいたN高生だけが味わった贅沢な時間でした。
質疑応答コーナーではキャラクターデザインにまつわるお話や、一緒に働きたいと思う人や自分がデザインした中で一番好きなキャラクターなどについて幅広くお答えいただきました。
中でも「モチベーションの維持方法や考え方について教えてください」という質問に、「少し厳しい言い方になってしまいますが、モチベーションを維持するという時点で本当に好きじゃない。本当に好きなことってそういう考えにならないと思うんです」というお答えが非常に印象的でした。
最後に生徒へのメッセージをいただきました。
「自分の好きなことや表現することを仕事にするのは茨の道ですし、包み隠さず言うと厳しい世界です。ただひとつ言えることは、この業界に入って『ダメだな』と思ったとしても、それは自分自身がダメな訳じゃないということはわかっていてください。それは単に水が合わなかっただけなので、また新しいことに挑戦すれば良いと思います。それでもやりたい人は是非来ていただいて、将来一緒に仕事できればいいなと思っております」
ご自身の経験やアニメーション業界の現実についてオープンに語っていただき、また、高度な技術を惜しみなく披露・伝授してくださった田中さん。生徒たちの本気に火をつけていただきました。
素敵な授業を本当にありがとうございました。
■田中将賀氏プロフィール
1976年生まれ、広島県出身。代々木アニメーション学院卒業後、アートランドを経て現在はフリー。『プリンセスナイン如月女子高野球部』(98年)でアニメーターデビュー、『家庭教師ヒットマンREBORN!』(06年~10年)でキャラクターデザインを初担当。長井龍雪監督とのタッグのもと、『とらドラ』(08年~09年)、『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』(11年)、『あの夏で待ってる』(12年)、『心が叫びたがってるんだ。』(15年)でキャラクターデザイン・総作画監督を手掛け、一躍注目を集める。長井監督の最新作『空の青さを知る人よ』(19年)でもキャラクターデザイン・総作画監督を担当。新海誠監督とはZ会のCM作品『クロスロード』で初タッグ。以降『君の名は。』(16年)、『天気の子』(19年)でいずれもキャラクターデザインを担当。近年ではイラストレーターとしても活躍している。
<N予備校>
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