
※このブログは、起業部BLP*に所属しているN高ネットコース2年生の山本惣大さんが書きました。
*BLPとは、『Business leadership program』の略で、本気でビジネスに取り組む生徒のための上位プログラムです。
N高等学校・S高等学校・N中等部の生徒による「N/S高起業部」では、起業を通じてイノベーティブな思考を養い、日本や世界を支える人材の育成を目指しています。
ビジネスプランの構築や実行を通じて、自分と社会との接点や自らの進路を考える機会を提供する中で、年に一度、部員が自身の起業活動をブラッシュアップすることを目的とした『ビジネスプラン特別審査会』を開催してきました。2025年2月4日(火)には、起業部員に限らずN/S高生・N中等部生なら誰でも参加できる『ビジネスプランコンテスト2024(N/S起業部ビジコン)』を実施。学園内から50チーム以上の応募があり、その中から予選を勝ち抜いた6チームが最終発表の場に立ちました。
本ブログは、今回のコンテストに出場した山本惣大さんにN/S起業部ビジコンを振り返りながら記事を執筆してもらいました。起業家マインドを持つ挑戦者たちがどのような経験をし、そこからどんなものを得たのか、ぜひご覧ください。
こんにちは、N高ネットコース2年の山本惣大です。N/S起業部ビジコンに参加した理由は、単なるアイデアの披露ではなく、「昆虫観察を通じて未来を創出する」という確固たる信念のもとに参加しました。私が昆虫に興味を持つようになったきっかけは、11歳のときにコロンビアで出会ったツノゼミ。この小さな昆虫が持つ独特なデザインと巧妙な擬態に、私は心を奪われました。
Bugcreationを立ち上げた理由
昆虫の魅力を感じた私は「ネットの高校マイプロジェクト」や 研究部の活動を通じて、昆虫の生体構造を分析し、その特性を応用可能な技術へと展開できる可能性を探求しました。
自分の活動の一環で、小学生向けの昆虫観察教室を企画・実施しました。静岡県で1泊2日の観察合宿を行い、約30名の小学生に昆虫の魅力や観察方法を教える講師を務めました。
合宿に参加した子どもたちは昆虫を採集することで満足していました。昆虫の本当の魅力は、ただ捕まえるだけではなく、じっくり観察することでこそ見えてくると私は思っています。私が目指している素晴らしい観察体験ができない現状を調べていくと、「昆虫を観察する道具の不足」が原因であることに気づきました。
その気づきから、誰もが気軽に昆虫を観察できる「IBOX(アイボックス)」を開発し、観察した記録や共有ができる「MIMIMON(ミミモン)」というプラットフォームを構想しました。
IBOXとは誰もが手軽に昆虫を観察できるツールです。一方、MIMIMONとは昆虫の観察データを蓄積し、バイオミメティクス研究へ活用するプラットフォーム。これらを包含するプロジェクト名が「Bugcreation(バグクリエーション)」です。
さらに、昆虫の特異な能力が工学分野に応用できる可能性にも着目しました。例えばハンミョウという虫の脚の構造はロボットの高機動設計に活用されており、昆虫の翅の動きは空力デザインの革新に活用されていることを皆さんはご存知でしょうか。
これらの研究成果をより広く発信するため、事業化を視野に入れ、起業部BLPへと参加しました。
ここまでの道のり
ビジネスプランの構築は想像以上に難しいものでした。研究者視点に偏ると事業の実現可能性や市場性を見失ってしまいます。そこで、起業部BLPのメンタリングやゼミを活用し、起業部アドバイザーから何度もフィードバックを受けながら事業モデルを練り直しました。
特に考えさせられたのは、以下の3つの問いです。
- IBOXの主要ターゲットは研究者か、それとも教育市場か?
- 収益モデルをどのように確立すべきか?
- 昆虫観察の魅力をどうすれば多くの人に伝えられるか?
また、プレゼンテーションの組み立てについても重要な指摘を受けました。「自分が伝えたいことを話すのではなく、聞き手が知りたいことを話すべき」という言葉が胸に響きました。N/S起業部ビジコンの持ち時間は5分間です。限られた時間の中で最大限の説得力を持たせるために、何度も構成を練り直しました。
さらに、実際に3DプリンターでIBOXのプロトタイプを作成し、ユーザーテストを実施。実際に手に取ってもらうことで、新たな課題が浮かび上がり、理論だけでは見えてこなかった改善点を見出せるようになりました。この過程で得たフィードバックをもとに、機能やデザインを改良し続けました。
決勝戦当日
迎えたN/S起業部ビジコン決勝戦。発表順はまさかのトップバッター。会場に足を踏み入れた瞬間、心臓の鼓動が高鳴りました。審査員席には、起業分野の第一線で活躍する家入一真氏(N/S高 起業部 特別顧問、株式会社CAMPFIRE 創業者)と夏野剛氏(学校法人角川ドワンゴ学園理事)が座り、鋭い視線を向けていました。
「これまで積み上げてきた努力を、全力でぶつけるしかない」
私は深く息を吸い込み、ステージに立ちました。
私のビジネスは単なる昆虫観察ではなく、未来の技術創出へとつながるものです。昆虫観察から始まる生物規範の未来について語り、昆虫の生態が持つ可能性とそれを社会に活かす意義を伝えました。発表後には審査員からのフィードバックがあり、家入氏からは「昆虫が好きなのはよく伝わったが、事業としてどのようにスケールさせるかが鍵になる」とのご意見をいただきました。また、夏野氏からは「社会への影響をより具体的に示すことで、共感を得やすくなる」とのアドバイスをいただきました。お二人が真剣な眼差しで私のプレゼンを聞いてくださったことは、大きな自信となりました。
また、他の出場者のプレゼンからも多くの学びを得ました。特に「ドローンを活用したマーケティング戦略」や「自作のソフトウェアを用いたビジネス展開」といった柔軟な発想に刺激を受け、事業に対する視野が大きく広がりました。
今後の展望
このコンテストを通じて、「自分の考えを他者に伝える難しさ」と「そのプロセスの面白さ」を深く学びました。
昆虫が持つ可能性をさらに掘り下げ、実用化へ向けたブラッシュアップを続けていくことが不可欠です。
今後は、以下の取り組みを進めます。
- IBOXのプロトタイプのさらなる改良
- ユーザーテスト(昆虫教室)を通じた実証実験
- ビジネスプランの具体化(特に収益モデルの確立)
- 海外のバイオミメティクス研究者とのコラボレーション
これらの施策を通じて、昆虫観察の価値を国際的に広めることを目指します。
Bugcreationは単なる昆虫観察の枠を超え、新たな技術と社会をつなぐ架け橋になる。そう信じて、次の挑戦へと歩みを進めていきます。
「昆虫が未来を創る」 その可能性を、これからも追求し続けていこうと思います。
最後に
N/S起業部ビジコンの第1位を獲得した生徒の感想を紹介します。
同率1位で2組が受賞しました。2組の選出理由は「圧倒的な行動力」です。
まずはオリジナルのアクセサリーブランド「reposer」を立ち上げ、すでに顧客を獲得している、N高オンライン通学コース1年の木下まおさん。
「審査員のお二人からいただいたフィードバックを活かして、たくさんの方を笑顔にできるアクセサリーをこれからも届けていきたいと思います」
続いて、ドローンを活用したビジネスで株式会社AirFilmsJAPANを法人登記済み、N高ネットコース3年の鈴茂佑太さん。
「得意なこと、好きなことに全力で向かってきました。これからも情熱を持ってさまざまなことにチャレンジしていきたいです」
N/S起業部ビジコン当日の模様は下記のリンクからアーカイブ視聴が可能です。
・ニコニコ生放送:https://live.nicovideo.jp/watch/lv346561011
・YouTube:https://www.youtube.com/live/95TdKHZaFm8
ぜひご覧ください。