
2026年5月27日、昨年に続き、N高等学校・S高等学校・R高等学校(以下、N高グループ)、N中等部の部活動「N高グループ投資部」と「N高グループ政治部」が『【投資部×政治部合同講義】〜教育と投資の最前線から考える〜 10年後を生き抜く力とは?』を開催しました。
今回登壇したのは、投資部特別顧問で投資家の村上世彰氏と、2026年4月より政治部顧問に就任した東京大学公共政策大学院教授の鈴木寛氏です。「10年後を生き抜く力とは」をメインテーマに、投資・教育・政治それぞれの最前線から、生徒たちへメッセージが伝えられました。
講義冒頭では、お二人による相互紹介が行われました。
村上氏は鈴木氏について、次のように紹介しました。
鈴木さんとは40年、ずっと一緒にいろんなことを考えてやってきました。
中学・高校・大学も一緒で、鈴木さんが「通産省に入りたいんですよ」と相談に来て、「じゃあおいでよ」と役所に連れて行ったのが始まりです。見事試験に通り、一緒に通産省で働くことになりました。
山口県への出向や慶應での活動など、ずっと一緒に仕事をしてきました。お互い役所を離れ、鈴木さんは政治の世界へ進み、12年間国会議員として活動されました。
これまでの幅広い経験に加え、多くの人をつなぎ、さまざまな議論を生み出してくれる方です。まさに政治部の顧問にふさわしい方だと思っています。
「この世の中をどう変えていくのか」をずっと一緒に考えてきた、相棒のような後輩です。
一方の鈴木氏は村上氏について、次のように紹介しました。
村上さんは役所に入ってからも近いところで仕事をしていましたが、経済政策に詳しい人はたくさんいても、生きたマーケット、市場、株式市場や金融市場について、ここまで深く分かっている人は村上さんをおいて他にないと思っていました。
それから村上さんに対してすごく思うのは、ものすごい義侠心です。例えばコーポレートガバナンスについても、「株主から預かったお金を、経営者は本当に真剣に世の中のために使っているのか」と問い続け、当時の経営の在り方を変えたいという思いを強く持っておられました。私もそれに非常に鼓舞されましたし、ご自身も道なき道を、いろんな抵抗をものともせず、ブルドーザーのように突き進んでいく方です。
長年の関係性が感じられる軽快な掛け合いに、会場は和やかな雰囲気に包まれました。

■ 「AIにできない領域」がこれから大切になる──鈴木寛氏が語るAI時代の教育と政治
鈴木氏は、「AI時代に政治と教育はどう変わるのか」をテーマに講義を行いました。
AIが世界中の教育を大きく変えていくとしたうえで、教育とAIの関係を「Education for AI」「Education of AI」「Education by AI」という3つの視点から説明しました。順に、AI時代に向けた教育、AIそのものを理解する教育、AIを活用することで教育がどう変わるのかという考え方です。
AIを使いこなす力が求められる一方で、鈴木氏は「AIではできないこと、AIだけではできないことがいっぱいある」と話しました。その例として「言葉にならない経験」「数字にならない直感」「身体性」を挙げ、哲学や芸術などもこれからさらに大切になると語りました。
また、AIが教育にもたらす可能性について、AIエージェントの活用によって、誰もが「24時間365日の家庭教師」を持てるようになると説明しました。さらに、人間同士の共同学習にAIエージェントが加わることで、学び合いがより深まる可能性にも触れました。
一方で、生成AIを使えば簡単に答えを得られるようになったことで、これまでの「宿題」のあり方にも変化が起きていると指摘しました。「大人用のAIは答えを早く出してくれるのがいいAIなんだけど、教育用のAIっていうのは、それじゃ困る」と話し、自ら頭を使って考える機会をどのようにつくっていくのかという課題についても語りました。
政治については、AIによって合理化できる部分が増えても、限られた資源の中で何を優先するのかといった判断は人間に残ると説明しました。「もちろん合理化できるところはAIに任せるけど、まだまだ人間がやるところはあります」と語り、AI時代においても人間が考え、判断することの重要性を伝えました。
■ 実際にやってみるから見えてくる──村上世彰氏が語る「お金から社会を見る力」
続いて、投資部特別顧問の村上世彰氏からは、「投資とは何か」をテーマに講義が行われました。
村上氏は、投資する金額の大きさではなく、実際に自分で投資をすることで「いろんなことが分かる」と語り、投資を通じて企業や経済、社会の動きに目を向けることの大切さを伝えました。
講義では、日本の株式市場についても解説しました。企業が現金をため込んでいた状況から、株主還元が進み、お金が社会の中で回り始めている変化について、自身の経験を交えながら話しました。
また、株価は国際情勢などによって短期的に上下するものの、長期的に考えるうえでは「需給バランス」も重要だと説明しました。企業による自社株買いも株式への需要の一つであることや、純資産や利益に対する株価などの指標についても触れました。
投資を単に利益を得るための手段として見るのではなく、実際に投資をすることで企業や経済への関心を広げ、社会の動きを考えるきっかけにしてほしいというメッセージが伝えられました。
■ 評論家ではなく、自分でやってみる──両顧問が答える質疑応答
講義の中では、生徒から両顧問へ多くの質問が寄せられました。
「AI時代の到来やAIの進歩によってさまざまなことが変化していく中で、政治分野や投資分野でこれから起こる変化について、意識的に注視すべきポイントは何か」という生徒からの質問に対し、鈴木氏は次のように答えました。
評論家ではなく、自分でやってみると、何を注視したらいいのかが解像度高く見えてくると思います。僕は31年間、すずかんゼミというのをやってきました。1000人の教え子を輩出しました。その中から、いろんなベンチャーもできたし、政治家もいっぱいいるし、首長もいます。それで初めて、評論家あるいは制度設計者では分からないことが分かりました。
新しい時代、誰もやっていないことを面白いなと思ったら、まずやってみるということだと思います。一般普遍的な話もある程度は知っておいた方がいいけど、それだけ知っていてもしょうがない。あとは独自のセンスというか、見方というのを作ってほしいなと思います。
また、村上氏は次のように答えました。
あんまりこだわりを持たない。今日、全体を通じて皆さんの質問もこだわった質問が多いけれど、AIの出現がどうかはあまり関係なく、とりあえず勉強です。その中で何が自分が得られるか。得られた中でどう判断して何をしていくかっていうことだと思います。あんまり肩に力を入れずに考えてみる。
ものすごくいい経験をこのN高って本当にさせてくれる。普通、僕は投資の話を「教えてください」と言われても絶対しないです。これはもう秘密中の秘密ですよ。でもやっぱり高校生で「こんなことを考えてるんですけど、どうでしょうか」って言われると、教えたくなる。鈴木さんもそうですよね。いろんなことを聞かれたら答えたくなる。それが自分の人生だ、みたいなところがあるわけじゃないですか。だから僕も、楽しい時間を頂戴してやらせていただいているのかなと思っています。

■ 未来を生きる生徒たちへ──両顧問からのエール
講義の最後には、お二人から生徒たちへメッセージが送られました。
村上氏は、次のように語りました。
投資部に参加される方は、この1年間で「どんなところに投資したいのか」「なぜ投資したいのか」、そして「その投資の経験を今後どう生かしていきたいのか」ということを、仲間と一緒に学んでいくことになります。
そういう意味では、今日ご覧いただいた皆さんも、いろいろな形で参加したり関わったりすることができますので、ぜひ一緒に考えてください。
鈴木氏は、今後さらに生徒数が増えれば影響力も大きくなるとしたうえで、次のようにエールを送りました。
10年後、20年後に、N高グループ政治部出身者が国会議員や地方議員、さらには首長として活躍することも十分に期待できます。
もちろんその中で政治を学ぶことで、自分は政治家ではなく支える側として社会に貢献したいと考える人が増えることも大切です。
単に高校の一部活を超えた日本社会を動かせる素晴らしい部をお預かりしたことを最大限活かして日本と世界を変えていきたい。一緒に頑張りましょう。
■ 生徒たちの学びと気づき
【投資部】
N高2年 大谷将万さん
今回の合同講義では、AIが世界の教育を大きく変えるというお話が最初に心に留まりました。
鈴木先生が資料作成や情報収集にAIを活用している具体例を教えてくださり、私も同様の使い方をしていることもあり、とても身近に感じられました。
一番心に残ったのは、鈴木先生が挙げた「言葉にならない経験」「数字にならない直感」「身体性」といった、AIにはできない領域のお話です。AIによって多くの仕事が代替される可能性があるという記事を読んで不安もありましたが、人間にしかできない領域があると知り、驚くと同時に安心しました。
また、AIの政界参入が今は難しい理由として、責任を誰が取るのかという社会構造がまだ決まっていないという視点には、AIと社会の関わり方について深く考えさせられました。
AI時代を生きるヒントをもらえる、有意義な時間でした。
【政治部】
S高2年 鈴木理緒さん
AIが人間を超えていくこの時代に、「10年後を生き抜く力」とは何でしょうか。
私たちはつい、失敗しない「型」を求めてしまいがちです。しかし、ネット上にある情報や数字はいずれAIがすべて学習してしまいます。だからこそ、実際の行動を通じて得られる「リアルな経験」「五感で感じる違和感」「数字に表れない直感」、すなわち、AIがアクセスできない「体験」の蓄積こそが、10年後を生き抜く力となるのではないでしょうか。
では、その「体験」を深く自分のものにするにはどうすればよいのか。
そんな私の疑問も、お二人の対談が晴らしてくれました。
これまでの私は、無意識のうちに効率性や無難な選択を優先し、外側から分析する「評論家」のようになっていたのかもしれません。しかし、型にこだわりすぎず、村上先生の言う肩の力を抜いて飛び込んでみること、そしてその「当事者」としての実践の中で、鈴木先生が説く自分だけの見方や独自性を身につけていくことこそが、「体験」を「10年後を生き抜く力」にするのだと気づかされました。
主体的に動く当事者として「自分だけの解像度」で社会を捉え、思考と実践のサイクルを回し続ける。それが、私の解釈でお二人から受け取ったメッセージです。
【学園生】
S高1年 澤田颯介さん
今回の講義で私は「興味を持つこと」「自分で考え判断をすること」「行動に移すこと」の大切さを学びました。
・投資に関しても政治に関しても難しく考える必要性はない
鈴木先生の話では、「AIができたら政治はいらない?」という疑問に対し、これからの時代を生きるための人間の強みは課題解決、物事の優先順位をつけることだと学びました。村上先生の話では、投資は難しいものではなく、実際にその面白さや怖さを感じてみることが大切であるということを学びました。
・スケールに騙されない
村上先生から投資部の資金の話を聞いた時、私は物事をスケールで判断してしまっていることが多いと感じました。運用資金20万円という額に不安や心配を抱いていましたが、講義を聞いてスケールは違っても本質が大きく変わることはないとわかりました。そして実践することによって得られる体験に強く惹かれ、実際に投資を体験することが楽しみになりました。
物事の状況や大きさに惑わされず、考え、判断し、実際に検証するプロセスこそが課題解決や目的に向かっていく本質だと感じました。また、行動をするためには、さまざまなことに興味を持ち、タイミングを自分から掴みにいけるようにすることが大切だと改めて感じました。
投資、教育、政治という異なる視点から語られた今回の合同講義は、生徒たちがこれからの時代をどう生きるかを考えるきっかけとなりました。
■ 関連リンク
・N高グループ投資部
Webサイト:https://nnn.ed.jp/attractiveness/extracurricular/club/investment/
・N高グループ政治部
Webサイト:https://nnn.ed.jp/attractiveness/extracurricular/club/politics/
・講義動画(YouTube)
【N高投資部×政治部】投資家・村上世彰氏と東京大学・鈴木寛氏が、教育と投資の最前線から「10年後を生き抜く力」を中高生と考える
https://www.youtube.com/watch?v=z6r7l139oRk



